大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和32(オ)728 判決

主 文

原判決を破毀する。

本件を名古屋高等裁判所に差戻す。

理 由

上告代理人森田久治郎の上告理由について。

論旨中、原判決は、自白の取消に関する判例に違反し、法令の解釈を誤つたもの

であると主張する所がある。

記録に徴するときは、上告人は、第一審昭和三一年二月一〇日の口頭弁論におい

て、本件家屋を上告人が被上告人より賃借した旨自白し、原審同年一一月一五日の

口頭弁論において、右家屋の賃借人を以て上告人の父訴外Dであるとして、右自白

と自ら牴触する主張をなしかつこの主張を認むるに不可能でない立証をして居るこ

とは、所論の通りである。然るに原審は、右自白が真実に反しかつ錯誤に出た旨の

主張、立証がないから、その撤回を許すべきではなくして、右自白は依然として有

効であり、維持すべきものである旨判断して居る。

しかし、第一審においてなしたる自白と相容れない事実を第二審において主張し、

以つて自白の取消をなす場合、必ずしも明かにその自白の真実に反し錯誤に出たこ

とを出張しかつ特にこれが立証をなすことを要しないのであつて、いやしくも自白

にかゝる事実と相容れない事実を主張しかつその事実が証明せられるにおいては、

先になしたる自白は自ら暗黙に取消されたものと解すべきを相当とする。このこと

は、大審院、当裁判所を通じ屡次判例の示す所である。(大正九年(オ)第二六四

号同年四月二四日大審民三部判決、民録二六輯上六八七頁、大正一〇年(オ)第七

九二号同年一一月二日大審民三部判決民録二七輯下一八七二頁、昭和二四年(オ)

第二一九号同二五年七月一一日当裁判所第三小法廷判決民集四巻七号三一六頁)

されば以上の事項につき右と異る見解の下に単に前記のとおり判示したのみで審

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理を尽すことなくただちに自白の撤回を許さないと判断した原判決に、法令の解釈

を誤まりかつ理由不備の違法があり、したがつて論旨は理由があるから、その余の

論旨の判断をなすまでもなく原判決は破毀を免れない。

よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 石 坂 修 一

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 高 橋 潔

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